「数学ガールの秘密ノート 行列が描くもの」を読んだ

f:id:Kenta-s:20181202130411j:plain

数学ガールの秘密ノート 行列が描くもの

なぜ読もうと思ったのか

数学ガールの秘密ノートシリーズはこれまで全部読んでいて読む以外の選択肢がなかった。

概要

  • 第1章 ゼロを作ろう
  • 第2章 イチを作ろう
  • 第3章 アイを作ろう
  • 第4章 星空トランスフォーム
  • 第5章 行列式で決まるもの

それから、いつものように始めにはプロローグ、終わりにエピローグがあり、今回もエピローグは「うわあ、いろんなものあるっすね!」から始まる(どうでも良い情報だが、自分はこのセリフが大変気に入っている)。

「ゼロを作ろう」というのは零行列の説明で、
「イチ」は単位行列の説明、
「アイ」というのは、虚数iの行列バージョンを、すなわち2乗すると単位行列を-1定数倍した行列と等しくなる行列のことを指している。これを実数だけの要素で作る。
「星空トランスフォーム」の章は、行列が変換を表しているものだと考えることができるという話。座標平面が行列によって移される様を「トランスフォーム」と表現しているのだと思う。
行列式で決まるもの」は、タイトルの通りだが、例えば行列式が0だったらその行列の逆行列は存在しない、といったことが説明されている。

印象に残った/役に立ったところ

このシリーズの最大の魅力(だと自分は思っている)である、わかりやすさ、書いてあることがどんな読み手でも理解できるという点が相変わらず素晴らしく、
読者が混乱しそうなポイントは会話形式で丁寧に補足されているし、余計なところは徹底的にそぎ落とされている。

例えば「僕」の説明を聞いて交換法則と結合法則を勘違いしそうになっているテトラちゃんに「僕」が助け船を出すところなどは、
同じように勘違いしそうになっている読者を意識したものだろうし、 理解しやすいように、基本的には計算に使う行列は2 * 2の正方行列に絞られていたりする。

個人的に一番楽しかったのは、「概要」でも触れた第3章の「アイを作ろう」のこの問題かもしれない。

{\displaystyle 
  I =
    \begin{pmatrix}
      1 & 0 \\
      0 & 1 
    \end{pmatrix}
}

として、

J^{2} = -I

を満たす2\times2行列Jを求めよ。ただしJは実行列とする。

この章を読んでいたときはちょうど会社のお昼休みだったが、問題が出てきたタイミングで仕事に戻ることになってしまい少しの間仕事が手につかない状態になってしまった。
(集中力を取り戻すため、やむを得ず解いた)

行列(というよりも線形代数)については以前「プログラミングのための線形代数」と、「まずはこの一冊から 意味がわかる線形代数」で学んだことがあったが、 今回みた虚数iの行列バージョンのような話は自分には初見だった。

少し話はそれるが、自分は学生時代にほとんど勉強しなかった身分なので、数学についても大人になってからほぼ独学で勉強している。
そのため今回のように自分にとって真新しい話が果たして一般的にも真新しい話なのか分からないという問題がある。
数年まえに英語も学んだことがあったが、自分にとっての新鮮なネタが周りのみんなにとっては使い古された常識だったということが最後まで起きていた。
例えば自分はFebruaryのスペルをずっと勘違いしていたが、それに気づいたとき(この時点ですでにTOEICは940くらいあったと思う)多いに興奮した。しかし興奮していたのは自分だけだったなどがあった。つらい。

さて、数学ガールに話を戻そう。
「星空トランスフォーム」は平面座標を行列で移す、といった話がメインなので視覚的にも楽しめる。
行列(or 線形代数)を勉強したあとは決まって、しばらく商業施設などの床のタイルが平面座標に見えてしまい「こういう行列を与えてみると、このタイルたちはどう移されるんだろう」という妄想に取りつかれるが、この妄想の引き金になるのがまさにこの章。

現在の職場は渋谷で、渋谷マークシティのなかを通って通勤しているが、ここのところマークシティの床のタイルが気になって朝も夜も下ばかり見てしまう。